『エルメス』体験 限りなく馬に優しいブランド

『エルメス』体験 限りなく馬に優しいブランド
エルメスは高級馬具アトリエとして、1837年に創業された。ここに描かれる馬は芦毛、栗毛、青鹿毛、黒鹿毛と異なっているのはもちろん、顔つきまでそれぞれ違う。まだ自動車が登場する以前のこの時代に、もっとも明白なブランドは馬車、そして自らの馬を飾る馬具だった。そう、「馬を描ける人」は、「エルメスを描ける人」になりうるのかもしれない。エルメスの馬具はすぐに上流階級の人々のなかで評判となった。エルメスのロゴ・マークともなっている、あの馬車の絵柄は、、当時の女性に人気のあった『ル・デュック』というエレガントなスタイルの馬車だった。

きっとエルメスの馬具を身に着けた馬はカッコよかったに違いない、と私は想像してしまう。その革製品は、馬の体を過度に締め付けたり拘束しないような構造になっているから、馬が痛がって暴れるような事もなく、御し易いというわけだ。そして馬の動きの微妙な点をとらえていて、同じ佇まいの馬は存在しない。このスカーフには19世紀の貴婦人や紳士たちのファッションや風俗、そして人間と馬との関係がまだ濃密だった頃のライフスタイルが描かれている。これだけ馬の動きの美しさを知っているブランドなのだから。

まるでフロベールの小説みたいに、様々な人間がいて、そこに生まれるいくつもの物語を感じさせるようなプリントだ。これだけ多くの色を使い、しかもそれぞれの線や色がわずかコンマ数ミリでもずれてしまったら、この雰囲気は壊れてしまうだろう。そこにはしっとりとした雰囲気の淑女もいれば、じゃじゃ馬を操るお転婆娘もいる。それは製品の高いクオリティによるものであるのはもちろんだが、『エルメスの道』によれば、エルメスの馬具は馬に優しかったらしい。その後、フランスが未曾有の繁栄を享受した第2帝政期(1851〜70)、時代の波にのり、繁栄の礎を築く。

エルメスがいかに馬という生命体を愛し、理解していたのかは、このスカーフの絵柄からも存分に伝わってくる。若い美男子、恰幅のいい男爵風、あるいはいかがわしいイカサマ師みたいな男もいる。皇帝ナポレオン3世がダンディで、その妻ウージェニも派手好きであった事から、オートクチュールなどの贅沢品が産業として栄えた時代だった。個人的には、以前、シルクスクリーンで手刷りのスカーフ調プリントを、アイテムに使用するために企画生産した事があるので、それがどれだけ困難な作業か、アウトラインは理解しているつもりだ。エルメスのスカーフには、どの絵柄にも描かれるテーマや世界観が設定されていて、1枚のスカーフが企画された時点から製品として仕上がるまでに、それぞれ18ヶ月もの期間を要する、と言われている。

| hermes

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